若年層にも認知症リスクはある
物忘れの増加をはじめ、ゆくゆくは深刻な障害にもつながるアルツハイマー型認知症。
認知症のなかでもっとも割合の多い病気ですが、これは高齢者ばかりに見られるものではありません。
40代、50代といった両親を介護するような年齢の方や、早ければ高校生でも発症する可能性があるのです。
厚生労働省では、「65歳未満で発症した認知症」を若年認知症だと定めています。
アルツハイマー型認知症の代表的な症状は、物忘れです。もちろん誰しも物忘れはあるものですし、何かをどこかに置き忘れて、探し回ることもあるでしょう。しかしアルツハイマー型認知症の人は、「物をどこかに置いた」という事実自体を忘れてしまうのです。
場合によっては、物を誰かに盗まれたと勘違いし、不安な気持ちから周囲を疑ってしまう「物盗られ妄想」に発展することもあります。
「頭痛」「めまい」「不眠」「不安」「抑うつ」なども、認知症の症状として知られています。
これらの症状が進行すると、仕事や家事のように手順を踏む作業ができなったり、今まで好きだったことに対して意欲がなくなったり、また他人への配慮がなくなったり。
「最近、人が変わってしまったかのようだ」と言われることが増えてきたら、認知症の初期症状を疑ってみてもよいかもしれません。
老老介護、認認介護とは?
若年層の認知症に関連して、超高齢化社会の現代では、「老老介護」「認認介護」が社会問題になりつつあります。
老老介護とは、65歳以上の高齢者を同じく65歳以上の高齢者が介護している状態のこと。「高齢の妻が高齢の夫を介護する」「65歳以上の子どもがさらに高齢の親を介護する」などのケースが大半です。
介護度によって差はありますが、プロの介護士でさえ腰痛が職業病の一つとされるほど、介護は肉体的な負担が大きいもの。
介護する人が高齢になるほど、さらに大変であることが想像できるでしょう。
高齢者が高齢者を介護している場合、こうした肉体的な負担に加え、精神的負担も限界を迎え、介護者本人も第三者のサポートがないと生活できない、いわゆる「共倒れ」状態になることも考えられます。
そして老老介護の中でも、認知症の要介護者を認知症の介護者が介護していることを「認認介護」といいます。
これは、事故が起きやすい危険な介護状況として知られています。「自分に認知症の症状がある」という自覚のないまま、介護を続けている人もいるため、認認介護の割合や実態はつかみにくいといわれています。とはいえ、もともと認知症は要介護状態を招く原因の上位に入っている症状であり、高齢の要介護者には認知症の人が多いのが現状。老老介護から、やがて認認介護状態になるのは、そう珍しくないといえるでしょう。
介護サービスで負担を軽減
認認介護でまず起こりうるリスクとして、認知症による記憶障害や判断力・認識力の低下により、食事や排せつなどの必要な世話をしたかどうか、介護者にもわからなくなってしまうことがあげられます。また、水道光熱費などの支払いを忘れて、生活環境を維持できなくなることもあるでしょう。こうしたリスクや事故を防ぐために、認認介護の場合、周囲の人に状況を把握してもらうことが重要です。
現在、老老介護や認認介護を対象にした行政のサポートは存在しません。しかし、介護サービスを利用していれば、ケアマネージャーが状況を察知し、介護者の負担を減らすためのケアプランを作成するといった対応ができます。また、子どもがいない夫婦においては、センサーなどで安否確認ができる見守りサービスの強化や、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅へ入居するという選択肢もあるでしょう。
高齢化と核家族化が進んだ現代では、周りの人や行政の助けを借りてこそ、健全な介護を行なうことができます。介護で深刻な状況に陥らないためにも、困ったときは子どもや兄弟、親戚、そして介護サービスをはじめとする行政に相談するようにしてみましょう。