介護保険サービスを受けるうえで、欠かせない存在であるケアマネージャー。
自分たちに合ったケアマネージャーと出会えるかどうかで、介護の満足度が左右される場合もあるようです。
ここでは、信頼できるケアマネージャーの選び方について見ていきましょう。
ケアマネージャーを探す方法
担当のケアマネージャーは、どうやって決まるのでしょうか。
通常、介護が必要になった場合、まずは介護認定を受けるために市区町村の介護保険課等に申請します。
介護保険サービスを受けるためには、ケアプランを作成するケアマネージャーが必要ですが、そのケアマネージャーを選定する相談窓口となっているのが、地域包括支援センターです。
何はともあれ、まずは市区町村の介護保険課等の窓口を訪ね、管轄の地域包括支援センターを紹介してもらいましょう。
ケアマネージャーは選べる?
では、ケアマネージャーは自由に選べるのかというと、そうではありません。
地域包括支援センターでは、利用者のニーズに合わせて、地域包括ケアにもとづいて
① ご自宅から近い居宅介護支援事業所
② 介護施設(老人保健施設)併設の居宅介護支援事業所
③ 医療機関併設の居宅介護支援事業所
のいずれかを選択し、仲介役となってくれます。
基本的に、地域包括支援センターに居宅介護支援事業所を選んでもらうことはできても、ケアマネージャー個人を選ぶことは難しいといえます。
「隣の家に来ているケアマネさんがよい人なので、うちもお願いしたい」といった指名でもしない限り、相性の良し悪しは、会ってみないと分からないのが現状です。
ケアマネージャーの役割とは?
ケアマネージャーの主な役割は、利用者さまに適した介護保険サービスが受けられるように「ケアプラン(介護サービス計画)」を作成することです。
ケアプランには、サービスをどのような目的で利用するのかが細かく記載されています。
また、利用する介護保険サービス事業所と連絡を取り合い、ケアプランに記載された目標が達成できるように、調整を行ないます。
【CASE①】ケアマネージャーに恵まれた事例
【CASE②】ケアマネージャーを変更した事例
利用者 | 長女と2人暮らしの70代男性。日中は独居。要介護1。 経管栄養、人工肛門と医療依存度が高く、軽度の認知症状あり。 |
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課題 | 経管栄養の管を外してしまい、感染症のため入退院を繰り返していた。 排尿は自立しているものの、歩行は不安定で明らかに施設対象者。 しかしながら、経済的な事情により、長女が施設入所を強く拒否。 介護サービスを受けながら在宅介護を希望していたため、前任のケアマネと意見が合わなかった。 |
新しいケアマネのサポート | ・ADL低下が著しく、日常生活に支障をきたすほどだったため、区分変更の申請を代行。結果、要介護3と認定され、支給限度額が上がり、サービスを増やすことが可能に。 ・訪問診療、訪問看護、入院先医療機関、訪問薬剤師、訪問歯科ら、すべての医療チームと連携を密にした支援体制を強化。 ・安全に入浴できるよう、また介護力軽減を視野にショートステイ併設のデイサービスを選定。 ・介護ベッド、車椅子の貸与、おむつの定期購入(宅配)、理美容などを手配。 ・高額医療介護合算療養費の申請手続き代行 など |
結果 | 充実した介護サービスと医療体制により、ご本人、ご長女ともに安心した生活を送れるようになった。 ケアマネージャーによるヒアリングでは、ご長女の話を聞くといったメンタルケアも実施された。 施設入所を見据えて、生計補助のために福祉課との調整も行っている。 |
ケアマネージャーとの付き合い方
「ケアマネージャーとトラブルを起こしたくない」「損をしないような付き合い方を知りたい」というのは、誰しも考えることかもしれません。
ケアマネージャーと上手に付き合うために、決まったマナーなどは特にありません。
まずは利用者さまやご家族は心を開き、ご希望を具体的に伝えることを心がけてみましょう。
介護に直接関係なくとも、利用者さまの性格や生い立ち、苦手なこと、クセなど、多くの情報をケアマネージャーに伝えると、よりよい介護サービスの提案につながります。
また、施設入所後もすべてを生活相談員やケアマネージャー任せにせず、定期的に連絡を取り、常に利用者さまの情報を知らせ合うことも大切です。
悪いケアマネージャーに出会った場合?
- 話を聞いてくれず、一方的なプランを押しつけてくる
- お願いしたことができない、遅すぎる
- 連絡が取れない、折り返しがない
- 希望した施設とは全然違う施設を紹介された
- プラン変更をお願いしたら、嫌な顔をされ、いい加減な対応をされた
- ケアプランの説明がないまま、サービスが始まったあるいは変更になった
- モニタリングにこない、来てもすぐに帰る
- 横柄、上から目線、性格が悪い
など
上記すべてに当てはまる最悪なケアマネージャーは滅多にいませんが、担当のケアマネージャーとどうしても合わない場合は、変更してもらうことも可能です。
ケアマネージャーを変更する方法
ケアマネージャーを変更したい時には、居宅介護支援事業所の管理者に変更したいと伝えるのが一般的です。
同じ居宅介護支援事業所に複数のケアマネージャーがいれば、他のケアマネージャーに変更することができます。
また、居宅介護支援事業所そのものを他のところに変更することも可能です。その場合、別の居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに相談してみるとよいでしょう。
ケアマネージャーについてクレームがある場合は、居宅介護支援事業所の管理者や地域包括支援センターのほか、市区町村の介護保険課、国民健康保険連合会などに連絡を入れるという選択肢もあります。
ケアマネージャーが変わった場合のデメリット
ケアマネージャーや居宅介護支援事業所を変更しても、原則として利用中の介護サービスは継続できることになっています。
そのため、ケアマネージャーが交代することによるデメリットは、特にないといえるでしょう。
ただし、新たに担当になったケアマネージャーと相性が合うかどうかは、また別問題。
ケアマネージャーの変更を希望する場合は、「なんとなく合わない」などとあいまいにせず、前任のケアマネージャーのどこに不満があったのかを具体的に伝えるようにしましょう。
【まとめ】合わないと感じたら、悩まず相談を
ケアマネージャーについて、探し方から役割、変更方法などをご紹介しました。
どんなに優秀なケアマネージャーでも、利用者さまによっては相性が合わないこともあるでしょう。
相性は実際にかかわってみないと分からないため、初対面で判断するのは難しいかもしれません。
しかしながら、合わない場合は変更してもらうこともでき、交代によるデメリットがないというのは安心ですね。
ケアマネージャーについての悩みは、私たちメディカル・ケア・プランニンググループでも受け付けています。
どうぞお気軽にご相談ください。
監修:奥田弓子
主任介護支援専門員、植物療法士(フィトセラピスト)。MCP株式会社 代表取締役。
著書に『あなたが育てる人材マネジメント―介護管理者養成研修テキスト』『介護サービス事業の経営実務(共著)』(第一法規株式会社)など。