認知症高齢者に特化した小規模の介護施設であるグループホーム。
住み慣れた地域で認知症の方に合わせた環境が用意され、認知症介護の知識と技術を持ったスタッフが対応することが特徴です。
長い期間を過ごすグループホームについて、詳しくご説明していきます。
グループホームと老人ホームの違い
グループホームは、一般的な老人ホームとどのような違いがあるのでしょうか。
まず、有料老人ホームは高齢者全体が対象となり、自立している方から要介護5まで、それぞれの状態に対応した施設があります。
定員が数名程度の小規模なものから、100名以上の大きな施設まで、規模もさまざまです。
それに対してグループホームは、認知症高齢者に対象を特化した共同生活の場。住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスの一つです。
定員数18人~27人(1フロア9人以下)と、比較的小規模。心を安定させ、認知症の進行を遅らせることなどを目的に、入居者同士で家事を分担して生活します。
グループホームのメリット・デメリット
グループホームへの入居を検討するにあたり、以下のようなメリットとデメリットがあることを理解しておきましょう。
[メリット]
[デメリット]
グループホーム入所のエピソード
実際にグループホームに入所したことで、利用者さまがメリットを得られた一例をご紹介します。
高齢になってもずっと仲良しだった3人兄弟がいらっしゃいました。同じ地域に住んでいたこともあり、3人でしょっちゅうお出かけをしていたのですが、ご長女が認知症になったのをきっかけに、以前のように兄弟そろって出かけることがなくなってしまったそうです。
そこで、ご自宅から最寄りのグループホームへ入所。環境の変化が刺激になったことと、認知症ケアに詳しいスタッフとの関わりを経て、認知症状の進行は落ち着いていきました。
外出の制限がないグループホームだったこともあり、ご兄弟が気軽にご長女を迎えに行き、お出かけを楽しむ日々が復活しました。
まるでわが家のように、グループホームでの暮らしを楽しんでいらっしゃいます。
グループホームの選び方
失敗しないグループホーム選びをするために、大切なことは何でしょうか。
候補を絞るうえで、費用や介護体制、医療体制などが条件になるのは大前提。実際に見学する時には、ホーム内の雰囲気や、働くスタッフの表情などもチェックしてみましょう。
また希望エリア内に候補のグループホームがいくつかある場合、まずはそのグループホームの運営推進会議へ参加するとよいでしょう。
運営推進会議では入所されている方の生活の様子を聞くことができ、また管理者やスタッフが何に力を入れて運営しているかを知ることもできます。
会議には誰でも自由に参加できるため、自治体の職員や担当の地域包括支援センター職員、かかわりのある地域住民も参加していることが多いようです。
また家族会を同日に行うことも多く、時には入所者ご自身が参加していることもあります。
グループホームの入居条件
グループホームの入所するための条件は、下記の5項目です。
グループホームの費用
グループホームの費用は土地や築年数、食事内容、介護体制などにより、ホームによる違いがあるものの、概ね以下のような相場で考えておきましょう。
料金体系 | グループホームにかかる費用には、大きく分けて初期費用と月額費用があります。 |
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入居一時金 | 初期費用とも呼ばれる入居一時金。 保証金や入居金などの名目で0~100万円程度が相場です。 |
費用の減額は可能? | 介護保険サービス費を対象に、入居者の所得に応じて設定された月々の自己負担の限度額を超えた場合に使える「高額介護サービス費制度」、低所得世帯または生活保護受給者の方が対象になる「家賃助成」、そのほか独自の助成が用意されている自治体もあります。 いずれも、市区町村の介護保険窓口へ問い合わせてみましょう。 |
介護保険 | グループホームは、介護保険の地域密着型サービスの一つ。 介護サービスにおける費用は、介護保険が適用されます。 |
月々の費用 | 月額費用はおおよそ15万円~20万円。 |
入居一時金の償却 | 入居一時金には、ホームごとに償却期間と償却率が定められています。 一定期間内に退去した場合は、そのルールに則って、入所者またはそのご家族が返還金を受け取ることができる仕組みです。 ただし償却期間と償却率はホームによって大きく異なり、3年以内に全額償却されるホームもあれば、10年以上の長期にわたって償却していくホームも。 必ず事前に確認しておきましょう。 |
障害者の場合 | 高齢者を対象にした認知症対応型グループホームのほかに、障害のある人が、日常生活上の介護や支援を受けながら共同生活を営むためのグループホームもあります。 |
グループホームでの生活とは?
グループホームで看取りは可能?
高齢者施設で看取りを行なえるかどうかは、医療との連携体制やご本人の身体状態によって異なります。
昨今では、看取りの体制が整っているグループホームも増加しつつあるようです。
私たちメディカル・ケア・プランニングでは、医師の診断により治療しても回復しない状態において、ご家族とご本人の希望があった場合にのみ、一部施設で「看取り」を行なっています。
当然ながら、高齢者施設は病院ではないため、看取りケアは緊張の連続です。
職種ごとに設けた看取りマニュアルに沿って、ご本人・ご家族・医療施設と連携した面談を強化。
施設側・医療機関側の看取りに関する同意書や、延命治療の事前確認書などを用いて、管理体制を徹底しています。
看取りケアはスタッフにも大きなストレスがかかるため、一人ひとりのメンタルケアにも配慮しながら行なっています。
【まとめ】グループホームに預けるということ
ご家族をグループホームに入所させることに、抵抗感や罪悪感を抱く方もいるかもしれません。
しかし、認知症の進行を和らげ、可能な範囲で自立生活を促すグループホームでの暮らしは、本人のQOLの向上にもつながります。
認知症がともなう介護は、ご本人もご家族も精神的に追い詰められ、大きなストレスにつながりかねません。
もう一度笑顔を取り戻し、ご本人もご家族も穏やかに過ごすために、グループホームへの入所を、ぜひ選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
監修:奥田弓子
主任介護支援専門員、植物療法士(フィトセラピスト)。MCP株式会社 代表取締役。
著書に『あなたが育てる人材マネジメント―介護管理者養成研修テキスト』『介護サービス事業の経営実務(共著)』(第一法規株式会社)など。