施設入所に、罪悪感を抱いてしまう方へ
その罪の意識は、誰もが通る道です
ご親族の介護を施設に託す決断は、介護される側にとっても介護する側にとっても、心が揺れ動くものです。
在宅介護の負担が増し、介護施設への入所を検討している方のなかには、罪悪感をもってしまう方も少なくないかもしれません。
「できることなら、慣れ親しんだ自宅に住み続けたい」と願う方は多く、それを叶えてあげたいと努力するご家族は多いことでしょう。
しかし、毎日の大変な介護のなかで、介護疲れが限界を迎えれば、介護者の愛情が憎しみに変わることがあるかもしれません。
かつての日本では、親の介護を子が担うというのが常識でしたが、核家族化が進んだ今、介護を担う個人に負担が集中しやすいのが実情です。在宅介護を続けることで、精神的、肉体的、そして経済的にも追い詰められてしまうケースが多く見られます。
そうなる前に、在宅介護のみという選択肢に縛られすぎず、施設入所を前向きに検討してみてもいいのではないでしょうか。
罪悪感は、抱え込まずに相談を
介護保険制度は、少子化、高齢化という社会の現状をふまえ、介護を家族の力だけで行なうのではなく、社会全体で行なうために生まれた制度で、介護の必要度に応じてさまざまな公的サービスを提供するものです。
そのため要介護状態になれば、訪問介護やデイサービスを受けられるのは当然の権利として認められています。そして、介護施設に入所して受けるサービスも、介護保険サービスの一つです。社会のニーズに迫られて誕生した仕組みなのですから、本来、利用するのに罪悪感をもつ必要はないのです。
もし罪悪感を抱いてしまったら、一人で抱え込んで悩まずに、誰かに相談してみましょう。
主治医やケアマネージャーは、ご本人だけでなく、介護してきたご家族のこともわかっている人たちです。
また、施設への入所を検討中にも、揺れる気持ちや罪悪感が残っていることなど、遠慮なくご相談してみてください。介護施設のスタッフは、介護の苦労を誰よりも理解しています。当然、入所予定の施設のケアマネージャーや生活相談員も、しっかりと話を聴いてくれますのでご安心ください。
入所後にも、できること
介護は「施設に入所させたら終わり」ではありません。施設に入所しても、ご家族のふれあいを感じてもらうことは欠かすことのできない大切な介護です。入所後はイベントだけでなく、定期的に施設を訪ね、ご一緒に食事やアクティビティに参加されるとよいでしょう。
施設任せにせずに、「施設と一緒になって、少しでも寂しさを感じさせないようご本人のケアをしていく」というお気持ちを持ち続けてください。
また、もし施設に要望や不満があったら、きちんと話すように心がけてみましょう。
最も大切なのは、ご家族にとって最善の介護ができることです。入所先の施設に対しても安心感をもてるように、積極的に関わっていただくことをおすすめします。